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『IPPON!』脱稿まで打ち合わせあと何本!?(15)|原作付きマンガ一緒につくろう計画

前回までの展開はこちらから

(今回の範囲の原作)

上級生たちの視線が、ある新入生に集まっている。アーヴィー、壇の代わりの軽トラの荷台に立つ。
アーヴィー「東京都出身、花本・アーヴァイン・賢治です。パパがアメリカ人なので、こんな名前です。“アーヴィー”って呼んでください」
人だかり、「すげー」「ハーフかー」「イケメンー」「背たっけー」などとガヤガヤする。
近藤「へえ、すごい新入生ですね」
うた「手足が長いし、バネもありそうだし、跳躍とか向いてるんじゃないですかね」
野口「バーカ、ああいう雰囲気(モテそう)のヤツはな、たいていバスケ部かサッカー部と相場が決まってんだよ。陸上部に集まるのは基本、変なヤツなんだから」
うた「えーっ」
近藤「暴論だ!」
壇上ではアーヴィーの自己紹介が続いている(出身高校は東京都立日比谷高校〜)(高校では生徒会活動をしていて〜)。
アーヴィー「あとは、なんでしたっけ」
アーヴィー、にこやかに学生会の委員にたずねる。
学生会「大学での目標と、入部希望の部活だね」
アーヴィー「あ、ワカリマシタ」

*第0話の原作全体をおさらいしたい方は『(1)第0本(プロローグ)原作テキスト』で再読できます。

◆原作担当:朽木 誠一郎
◆ネーム/解説:中村珍

※この企画は、2018年までに原作者・朽木誠一郎さんが執筆した原作テキストを頂いて、作画担当・中村が、2019〜2020年にかけて、制作と並行しながら解説しています。


通しネーム(掲載済みの分)

初見ネーム1

初見ネーム2

初見ネーム4

初見ネーム5

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今回追加されたネーム


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ここからネーム解説


 ここから遂に、アーヴィーくんと陸上部の面々が出会うシーン。

上級生たちの視線が、ある新入生に集まっている。アーヴィー、壇の代わりの軽トラの荷台に立つ。
アーヴィー「東京都出身、花本・アーヴァイン・賢治です。パパがアメリカ人なので、こんな名前です。“アーヴィー”って呼んでください」
人だかり、「すげー」「ハーフかー」「イケメンー」「背たっけー」などとガヤガヤする。
近藤「へえ、すごい新入生ですね」
うた「手足が長いし、バネもありそうだし、跳躍とか向いてるんじゃないですかね」

 新入生が自己紹介する際、壇の代わりに軽トラの荷台に立つそうですが、これより前に描かれる“競り”の風景で恐らく壇として使われている軽トラがフレームインしている筈なので、アーヴィーくんの登場シーンで敢えて軽トラも初登場させるということはしていません。(ここで初めて軽トラを出すと、せっかくアーヴィーくんのシーンが始まるのに、へ〜!軽トラ使うんだ〜!?っていうところに気を取られてしまうと思うので。)
 実際の作画の段階になったらここ以降でもたびたびフレームインしてくると思いますし、背景が必要なコマで、カメラアングルの都合上どう考えても軽トラが入り込んでくる場面では必ず描かれるものと解釈してください。

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 2コマ目の上級生たちの「ハーフかー」「イケメンー」みたいなセリフは恐らく“競り”をパワハラとも何とも思わない視点から無邪気に出てくる「ハーフかー」「イケメンー」だと思ういます。ここで「ハーフかー」「イケメンー」という言葉に引っ掛かりを感じる層は、そもそも“競り”にも引っかかりを感ている層と重複する気がするので。
 この『無邪気に「ハーフかー」「イケメンー」とモブが言うシーン』を制作側の(意図ではなく、元々備えてしまっている)性質・社会に対する認識だと受け止められてしまうリスクもありますが、実際は『意図』なので、ここは演出上そのままがいいだろうなと思いながら原作を読みました。
 野口くん周りの外見いじりネタは“競り”をパワハラだと感知できるのに(※実際はパワハラを感知できても外見いじりについて感知できないみたいな、分野別の感度差は当たり前に存在するものですが、フィクション作品の中だと、こういう感度差が意図せず目立ってしまうこともあるので…)なぜ野口くんは近藤くんの外見をいじる感覚を持っているのか、というのがポイントになってきます。しかし、この上級生のモブたちは恐らく“競り”に疑問を抱いていない層としての機能を背負ってここにいると思うので。
 多分このモブの人たちはアーヴィーくんの登場に対して「ハーフかー」「イケメンー」というリアクションをするのが正しい(社会生活における正しさではなくキャラ設定的に、正しい)んだろうなー…と。

※制作側の(意図ではなく、元々備えてしまっている)性質・社会に対する認識だと受け止められてしまうリスクというのは、たとえば作中で犬を虐待するシーンを描いたとしましょう。これが『制作側の意図』として捉えてもらえる場合、虐待するキャラクターが描かれている(非道な人物を創作した)ものとして受け止めてもらえます。しかし『制作側の性質・認識』として捉えられてしまうと、こいつらは犬を虐待するのがいいと思っているんだ!!!!!エンターテイメントとして虐待を描いているぞ!!!!という誤解が生じてしまう。…みたいなことですね。
 逆ももちろん起こり得ますが。実は制作側がそういう性質なんだけども意図だと捉えてもらえて批判を逃れるみたいな。たとえば、子供が酷い暴行を加えられる残忍なシーンの連発で、作り手はそれに興奮するから(制作側の性質として、エンタメという認識で、同じ性癖の人が興奮するだろうという想定で)作っているんだけども、ストーリーの骨子や演出がしっかりしていると(制作側の意図と捉えてもらえて)、人間の残虐性を暴いた衝撃作!!みたいな扱いで済む、済むところか残虐性に真っ正面から挑んだ意欲作として評価されるみたいな…。

野口「バーカ、ああいう雰囲気(モテそう)のヤツはな、たいていバスケ部かサッカー部と相場が決まってんだよ。陸上部に集まるのは基本、変なヤツなんだから」
うた「えーっ」
近藤「暴論だ!」
壇上ではアーヴィーの自己紹介が続いている(出身高校は東京都立日比谷高校〜)(高校では生徒会活動をしていて〜)。

 モテそうなヤツはバスケ部かサッカー部って相場が決まっている…。これ、偏見だよとは頭で考えつつ、心で、ああ、なんかわかる…と思ってしまうんですが、なんでなのかなと考えています。多分、少なくとも私が通った学校ではそういうことになっていました。男子はバスケ部とサッカー部にかっこいい先輩が居て、女子はバスケ部と(サッカー部なかったので)バレー部かテニス部に憧れの先輩が居る、みたいな認識が、もう“世の中そういうもん”みたいに全校レベルで通っていたような記憶があります。
 学校によって****部の****の部分が別の部活に入れ替わるとかはあると思うんですが。他校の子は「陸上部ってなんであんなにかっこいい人ばっかりなんだろう」って言ってましたし、また別の学校ではバレー部の男子が超人気でした。
 中学校に入る段階だと元々ジュニアチームでプレーしていたみたいな経歴でもない限りは今から始める子ばかりだったし、その意味では特定の競技を選ぶ決定的理由を予め持っている子も少なかったと思うので…「女子にモテるから」「イケメンのグループに入りたいから」という理由で部活を選んでた男子も実際に居たし、そういうスパイラルも多少あるんでしょうかね…。
 最近でこそ減ってきたようですが、私たちが子供の頃はまだ世の中じゅうの人々が法律みたいに「野球部は坊主にしなきゃいけない」と狂信していた時代です。もちろんバスケやサッカーでも髪型が決められている学校は存在すると思うんですが、丸坊主必須の野球部員になる子と比べると、バスケやサッカーの子たちは髪型のお洒落も楽しめた…ってんで、モテるようなイメージが定着した可能性もあるかもしれません。
 まあ、あと単純に、スポーツしてる姿ってかっこいいですから(そう感じる人も多いでしょうから)、スポーツしている姿+お洒落との相乗効果+競技に対する好印象もある…のか?な?
 いずれにしても中学高校大学生… 10代から20代になって間もない子が狭い世界で身につける解像度なので、余計にそう思い込める要素が詰まっていたのかなと思います。
 私自身は野口くんの言う「ああいう雰囲気(モテそう)のヤツはな、たいていバスケ部かサッカー部と相場が決まってんだよ。」というのを、簡潔には、偏見でしょ(笑)って笑い飛ばす考え方ですが、個人としては、まあ言いたいことはわかる(笑)っていう思い出も持っている…という立ち位置からこのシーンを読みました。比較的ポジティブに、クスッとしながら。
 原作を書いている人がバスケ部かサッカー部出身で「ああいう雰囲気(モテそう)のヤツはな、たいていバスケ部かサッカー部と相場が決まってんだよ。」というテキストが来たら、これどういうテンションで書いてるのかなって真顔になってしまったかもしれませんが…(笑)
 原作者さんご自身が陸上部なので(自身がその属性の身内だからといって何をしてもいいわけではありませんが、本作の場合は)学生の等身大を考えても、この程度の自虐・身内いじりは採用して問題ないはず。…という印象です。
 間髪入れずにうたさんも近藤くんも「えーっ」「暴論だ!」って反発しているし、何より、アーヴィーくんが本当に“変なヤツ”だったという少し先のシーンに対する前フリですし。

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 最後のアーヴィーくんが自己紹介を続けているコマ、これがちょうど(ネームの段階では背景ちゃんと描き込んでいませんが)今回分の1ページ目で触れた、カメラアングルの都合上どう考えても軽トラが入り込んでくる場面では必ず描かれるものと解釈してください、というのに当たるコマです。

 ところで軽トラは何用の軽トラなんでしょうか。車の年式・型式・様相にこだわらない漫画の場合は気にするポイントではありませんが、大学に置いてある軽トラの用途(そもそも誰の車?)によっては、荷台の様子(マット敷いてある?素っぴん?何か置いてある?)や、AT車種かMT車種かも変わってくる(車種が絞られてくるとボディカラーも絞られてくる)ため、実在車種をそのまま描く必要性は本作の場合まったく存在しないと思いますが、なぜここにある軽トラなのかがハッキリすると、ある程度は元ネタに近い風景に辿り着けますから、リアリティをもって風景を成立させる一助になるかもしれません。


アーヴィー「あとは、なんでしたっけ」
アーヴィー、にこやかに学生会の委員にたずねる。
学生会「大学での目標と、入部希望の部活だね」
アーヴィー「あ、ワカリマシタ」

 学生会の人は自己紹介中の新入生から見てどの位置に居るものなのか原作者さんに確認してからとなりますが、もしアーヴィーくんの至近距離に学生会の委員さんが居るのであれば、手前のシーンで「背たっけー」と言われていたアーヴィーくんの身長を比較対象をもって示すことができるので、並べるチャンスがあるなら同じフレームに二人で入ってもらいたいなと思っています。(アーヴィーくんは軽トラの荷台に立っている状態なので分かりにくいかもしれませんが…。)
※ネームの段階では、身長差を忘れずに意識する!という自分に対するメモとして過剰に高低差をつけています。

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 最後のコマの上級生たちは、次の続くページで

先輩たち、わくわくしながら待つ。   

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noteは超・不人気マンガ家(中村珍)が無職になったとき「自力でweb雑誌みたいなのやって描き続けよう」と思って始めました…が、存外にうまくいき、おかげ様で今は忙しいです。犬と、ゲームと、マンガ描くのが好きです。| https://ching.tv

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