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『IPPON!』脱稿まで打ち合わせあと何本!?(2)|原作付きマンガ一緒につくろう計画

前回までの展開はこちら


作画担当者よ、
ネームを組み立てる
脳内を公開せよ!


今回のなりゆき

(前回、次回更新分の内容として予告していた『“セリ”のシーンと新入生歓迎会のシーンを解体する』という打ち合わせを続ける前に、)「作画担当者があの原作を読んでどんなシーンを思い描いて打ち合わせしているのか知りたい」「原作を直す前のネームがどんなものが想定されてるのかわからない」「どうやって組み立てたり直したりしているのか頭の中が見えない」というご意見を頂いたので(ごもっともです…)、脳内で起きていることをなるべくビジュアルでお届けできるように、手付かずの状態まで一旦遡ってお見せしようと思います。


まず解説したいのはプロローグとなる第0話の冒頭、競技場でアーヴィーくんが投擲をするシーン(↓)

原作ここから

◯熊谷スポーツ文化公園陸上競技場・砲丸ピット

T「現在 東日本医科学生対抗大会(東医体)陸上競技部門 男子砲丸投」
投擲ピットの中のアーヴィー。アーヴィーの左横顔。右首に砲丸を押し付けている。筋肉のつき始めた体に、静かに力を溜める。伝う汗。グッと屈み込み、右足でサークルの縁を蹴り出す。体が後ろ向きに跳ぶ。着地した右足を捻り込む。反転する体。
(アーヴィー視点で)青い空、眩しい光。

響き渡る声「アーヴィー、イッポン!」

(アーヴィー視点で)空にまっすぐに伸ばした左腕を、思い切り体に引きつける。反動を使いつつ、右手に持つ砲丸を思い切り突き出す。手から離れる砲丸。スナップを利かせる手首。

吠えるアーヴィー。
ドッと沸くスタンド。

会場アナウンス「砲丸ピットにご注目ください。ただいまの投てきは、北関東大学医学部、花本選手。好記録が期待されます。結果は……」

原作ここまで

このシーン(↑)をまとめてネーム化した上で、原作初見のネームについて、ページごと、複数回に分けて何を考えてネームを作っているのかを説明したいと思います。


*第0話の原作全体をおさらいしたい方は『(1)第0本(プロローグ)原作テキスト』で再読できます。



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※本企画では作画担当者がネーム担当も兼ねているため“作画者のターン”ということになっていますが、「作画者がネームもやる」という決まりごとがあるわけではありません!ネーム担当者が独立して存在する企画や、原作者がネームまで作ってしまう企画も存在します。

それでは、実際に“原作を読んだ作画者が最初に思い描いたマンガの中の風景”を可視化・可読化させていきましょう。

『冒頭シーン』通しネーム(解説なし)

以下が、(前回の打ち合わせ内容が適用される前の)『もらったままの原作テキスト』から冒頭シーン:競技場でのアーヴィーくんの投擲〜結果発表直前までの場面を、「そのままネームにした」ものです。

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冒頭の競技シーンはここまで。
【会場アナウンス「結果は……」】の次のシーンでは半年前に遡り、登場人物たちの大学での生活が描写されます。


『原作「初見」ネーム』について

「初見」「初見」と繰り返しているのは「フフン、私くらいプロの漫画家になっちゃうと初見でこれだけ書けちゃうんだもんね〜!」的なことをアピールしたいとか、それが凄いと思っているとかではなくてですね…。
「初見」=「とりあえず原作を読んだだけだから他のこと(取材や調べ物とか)は何もしてないよ!分からないことはとりあえず放置しているよ!」ということを念押ししたい…の意!なのです。


それでは、ページごと解説。
結構ボリュームがあるので、細かく区切っていきますね。


『P1』部分のネームと原作

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【P1に含まれている原作シーン】

◯熊谷スポーツ文化公園陸上競技場・砲丸ピット

T「現在 東日本医科学生対抗大会(東医体)陸上競技部門 男子砲丸投」
投擲ピットの中のアーヴィー。アーヴィーの左横顔。



1コマ目に風景を持ってきた理由

P1-1コマ目には【熊谷スポーツ文化公園陸上競技場・砲丸ピット】を絵付きで配置することにしました。これは解説しなくてもピンと来る人が多いと思いますが、「どんな世界観で始まる物語なの?」という読者さんの疑問に対するシンプルなアンサーです。この時点で「砲丸投げだな」と理解できるのは予備知識のある読者さんだけだと思いますが、詳しいことが分からない人にも「陸上のグランドかな?」ぐらい伝われば、入口の1コマ目の情報量としては妥当な範囲かなと思います。

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運良く『スポーツ文化公園 陸上競技場』と書いてある正門でもあるロケーションなら、その正門をどこかにフレームインさせることができればなおさら(その文字が読解できるレベルの日本語話者・日本語読者には)伝わりやすいです。


文字で伝える舞台設定

更に原作からは【T「現在 東日本医科学生対抗大会(東医体)陸上競技部門 男子砲丸投」】というテキスト指示が来ているので、文字でも「陸上競技である」こと「砲丸投げである」ことはサラッと読んでも伝わります。

とは言え、【現在 東日本医科学生対抗大会(東医体)陸上競技部門 男子砲丸投】という文字を平坦に同じサイズで書いてしまうと流し読みの人が情報をキャッチできない可能性があるので、ネームの段階でも【砲丸投】の文字を最も大きくしておきました。
男子】を小さめに書いたのも、ここではとりあえず競技名を強調するためですが、最終的な原稿ではフォントを変えるなどして文字サイズは同じにする処理で固める可能性もありますし、絵を含めた全体のバランスで、サイズもフォントも同じもので行く可能性も残っています。
ただ、ここではとりあえず何を一番強調すべきかのメモも兼ねて、【砲丸投】を一番大きくしておきました。

これによって絵だけでは伝わりにくいかもしれないここから先の場面も、「とにかく砲丸投げの場面である」という認識の共有だけは完了するので、親切な状態になります。(「絵で伝わらない漫画は駄作!」という思想信条の方にご納得頂けない可能性は強めに残りますが、読者さんに伝わったか否かという視点においては、「こういう伝え方でも伝わる」と思ってもらって差し支えありません。)

現在】の文字を小さく置いた理由は、(原作を通しで読んで頂くと分かりますが、)この次の場面で【半年前】という記述が来るからです。

T「現在 東日本医科学生対抗大会(東医体)陸上競技部門 男子砲丸投」
投擲ピットの中のアーヴィー。アーヴィーの左横顔。

//中略//

吠えるアーヴィー。
ドッと沸くスタンド。

会場アナウンス「砲丸ピットにご注目ください。ただいまの投てきは、北関東大学医学部、花本選手。好記録が期待されます。結果は……」

↑今やっている場面(現在)
↓次の場面(半年前)

◯北関東大学・トレーニングルーム
T「半年前 北関東大学医学部」

構成を重ねていって最終的に「このページまでが現在で、ここからの場面は半年前というのが正確に伝わらないと意味不明な展開になってしまう」という結論に至ればもっと時系列を強調しまくると思いますが…、今のところは、他の場面が固まるまで、一旦これで…。


原作テキストの1ブロックは1コマにまとめないの?

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テキストを2コマに渡って掛けたのは、「一箇所にテキストだけで大量の文字がまとまるのは退屈かも?」という理由もあって、絵のあるコマにも半分渡したのですが、実際に入る絵が文字で潰すわけにいかない構図になる場合や、文字の判読性が著しく下がる絵面になりそうであれば、フォントを調整するなどして2コマ目にテキストをまとめてしまうことも考えられます。
(そもそもこのテキスト自体が最終的になくなる可能性ももちろんまだあります。)

現段階では、「1コマ目の絵が、上から文字を掛けてしまっても良さそうな構図なら、このテキストは2コマに渡ったほうがいいかな」と思っています。

また、文字があるコマのほうが視線の滞在時間を長めに取れる(「文字をちゃんと読んでもらえるはずだ」という希望的観測をするならば、少なくとも文字を読んでもらっている間は次のコマに行かれてしまわない)可能性があるので、1コマ目に一瞬で流されないほうがいい絵が入る場合には、わざと1コマ目の中の“特にしっかり見て欲しい場所”の近くに、視線を誘導する目的で文字を置く方法を取ることもあります。(画面がゴチャゴチャするリスクが付きまとう方法なので一長一短ですが…。)

原作テキストが1文/1行/1ブロックにまとまっていると、まとめて1コマに流し込んでしまいたくなるかもしれませんが、そうするケースもある、というだけで、そういうルールやセオリーが存在するわけではありません。
一文をかなり細かく分解しながら複数のコマを構成するのはよくあることなので、「これを全部1コマにまとめなきゃ」という心配をする必要はありません。


知らないモノが原作に出てきた…

さて、1ページ目3コマ目、主要人物の1人であるアーヴィーくんが登場します。ここでイキナリ、ネームに「どんなとこ?」という不安なメモ書きが。

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投擲ピットの中のアーヴィー。

しかし砲丸投げ未見かつ原作テキストを初見の私、【投擲ピット】など知りません。文字が持っている情報から「投げる場所のことなんだろう」程度の想像はつくのですが…。
とりあえず「このコマに入るべきは投擲ピットなのだ」ということだけ書き添えて、調べ物は(一旦)スルー。


なんでこのコマ、ナナメなの?おしゃれ?

コマを斜めに切った理由は、現段階では不確定なのですが、【投擲ピット】なる場所の特徴がもしも結構な範囲(風景の面積)を描かなければ表現できないものならば、どこかを広めに取ったほうがいいかもな…という“念の為”があります。長方形のコマは上辺と底辺の長さが同じですから、コマの中の画面の中央あたりに人物を捉えてしまうと周辺の余白はだいたい同じような面積しか残りません。これだと(もちろん背景の内容にもよりますが)フレームインできたのは部分的、大事なパーツがフレームアウト、せっかく描いても雰囲気すら伝わらない…という勿体無いことが起きる可能性もあります。(くどいようですが、背景の内容によりますよ!)
一方、ナナメにコマを割ると、上辺か底辺、どちらか長めのほうの近辺に長方形コマより広めの余白ができるので、長辺の付近の背景を広めに描ける場合があります。

ナナメと長方形

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noteは超不人気マンガ家(中村珍)が無職になったとき「自力でweb雑誌みたいなのやって描き続けよう」と思って始めました…が、存外にうまくいき、おかげ様で今は忙しいです。犬と、ゲームと、マンガ描くのが好きです。| https://ching.tv