増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ひとふで小説|2-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[II]

前章:[I] II  二人が湯浴みする頃には陽がずいぶんと傾き、鮮やかに夕焼けしていた。風のない西の空で橙色に焼けた雲が有終の美をじっと待っている。冷えて澄んだ空気に混じって、近くからは虫の声や鳥の羽ばたき、峰々からはこの山に棲む獣たちの咆哮が聴こえてきた。地面に埋め込むようにして…

ひとふで小説|1-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[I]

I  大巌猫と山耳犬を従えて育った女児が、明らかに「剣を」と決めたのは、相棒を人魔に斃された夕刻。己の剣で初めて触れたのは幾度も幾度も撫でた可愛い可愛い相棒の毛で、初めて斬ったものは可愛い可愛い相棒の皮と肉だった。人魔や魔物の牙や爪は生命を狂わせるはたらきをもっていた。傷口から湧…