増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ひとふで小説|レンガイケッコン(17)

ひとふで小説|レンガイケッコン(17)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (17)  蓮本に素性を知られる不快の理由には「親しくない相手に大事なことを把握されている」というのも、きっとある。それならば、せっかく近付きつつある“好意的な顔見知り”から“友達”に格上げされることを目指すのも一つの道だろうか。  友達は難しくとも、せめて顔見知りから“知人以上友人未満”程度の関係性に格上げしてもらえれば、蓮本が自分の身の上を知っていることにも納得がいくかもしれない。  順番が逆だとしても、結果的に納得のい

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ひとふで小説|レンガイケッコン(16)

ひとふで小説|レンガイケッコン(16)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (16) 「管理人さんシートベルト、しました?大丈夫ですか?」 「あ!は、はいっ!はいっ!帰りは大丈夫です!さっきは、緊張しちゃって、ははは」 「帰り?行きもシートベルトちゃんとしてましたよ?」 「あ、あ、そっか、西関さんは気付いてないですよね、ごめんなさい、恥ずかしいから余計なこと言わなきゃ良かったな。実は来る道では乗る時に緊張しちゃってシートベルトうまくいかなくて、高級車はシートベルトも難しいな、全然はまらないなとか思っ

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ひとふで小説|レンガイケッコン(15)

ひとふで小説|レンガイケッコン(15)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (15)  運転席に乗り込もうとした蓮本は思い出したように身を引き、前を半ドアにしたまま後部座席のドアも開ける。後ろにスーパーの袋を置きながら、 「お荷物、邪魔だったら後ろも自由に使ってくださいね」  と言った。 「ありがとうございます、でも大丈夫です。そんなに多くないですから」  汁気が漏れ出る虞れのある物は袋に入っていないから後部座席に荷物を置いたところで蓮本にかかる迷惑は恐らくないのだろうが、どうしても、の理由でもない

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ひとふで小説|レンガイケッコン(14)

ひとふで小説|レンガイケッコン(14)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (14) 駐車券を誰が持っているか忘れているのだろう、精算機の前で立っている蓮本の表情はみるみる翳っていく。 「…管理人さん…私もしかしたら…」 「駐車券ですよね?」  徐に顔を上げた蓮本は隣に立つ東之を振り返って首を縦に振ると、今から涙目になる用意が整った顔をして、普段より上ずった声で言った。 「そう…!どうしよう、駐車券なくしちゃったかも…紛失した時ってどうするんだろう、初めて失くしたから…管理事務所に電話すればいいの?

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ひとふで小説|レンガイケッコン(13)

ひとふで小説|レンガイケッコン(13)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (13) 「やめてください、恐れ多くて最後まで何も食べられないまま帰ることになっちゃいます」  溜息の混ざった苦笑を声に絡ませて、東之は答えた。 「それで、西関さんは何も悪くないのに、私きっと本当は、すごく!…すき焼き食べたかったのに、食べられなかったのと空腹感でちょっとヘイト溜めそうになったりして、西関さんトバッチリ受けますよ、私なんか呼ばないほうがいいですよどうせ楽しい話もできないし」  冗談半分の前半を言い切ったあとの後半部

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ひとふで小説|レンガイケッコン(12)

ひとふで小説|レンガイケッコン(12)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (12)  汁気の多いカツ丼のためにビニール袋を1枚だけロールから捥いだ蓮本は、軽く苦笑のような溜息をついた。 「このビニール袋も、レジ脇に設置して必要な枚数を売ってくれればいいんじゃないかな。お金を払った利用者へのホスピタリティ的な設置なんだろうけど、タダじゃないんだし」  溜息は、ビニール袋を過剰に持ち帰る迷惑客の存在に対する落胆が主な理由。苦笑は、ポスターに書かれた文言をうまく面白がれなかったこと、もとい、東之と笑うタイミン

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ひとふで小説|レンガイケッコン(11)

ひとふで小説|レンガイケッコン(11)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (11)  蓮本のカゴの中身が食べ物一色になっている様子に東之が気付いたのは、先に並んでいた自分のカゴをレジ係の男性が引き寄せた時だった。 「…あの、殺虫剤…」 「ああっ…!やだ」  話し相手の居る買い出しに夢中で本来の用事をすっかり失念した蓮本は、東之の忠告で難を逃れることができた。お礼に二人分を合わせて払ってしまおうかと思ったが、既に東之は財布を半分開いているし、会計作業は始まっている。ここで「私が払います」「いや結構です」と

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ひとふで小説|10-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[X]

ひとふで小説|10-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[X]

前章:[I]〜[収録マガジン] X 遠い日の悪夢に魘されたのは久し振りだ。  相棒だった山耳犬と大巌猫を人魔に切り裂かれた十二歳の夕べを、思い出す。意識はぼんやりとしているのに、思い浮かぶ景色は鮮明だった。 「シオ、大丈夫?だいぶ魘されていたみたいだけど…。あの子たちが亡くなった日の夢を見たの?」  今年、二十歳になったシオが汗にぐっしょり濡れて飛び起きたのは、西の空が焼け始めた夕刻。  二十九歳になるターレデは二人分の料理を卓に並べ終えたところだった。依然として独身を貫い

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ひとふで小説|レンガイケッコン(10)

ひとふで小説|レンガイケッコン(10)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (10)「こんな作業服でこんな綺麗な車に乗るの、申し訳ないですね…。車側も想定してないんじゃないですか。…えっこんなダサい格好の人乗せるの?って思って、急にエンストしたりするんじゃないですかね…」  駐車場の中を徐行している時、東之が言った。両脇に並んでいる車の中には、蓮本の愛車をゆうに上回る高級車も並んでいたが、それでも内装も外装もこれほど手が行き届いている車はそうそう見つからなかった。 「いいじゃないですか、作業服。私好きで

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ひとふで小説|9-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[IX]

ひとふで小説|9-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[IX]

前章:[I]〜[収録マガジン] IX「ヴァンダレ様、いかがなご様子ですか?落ち着いて眠れそうですか?それとも、何か食べられますか?」  雪棉糸を平織りした大きな浴紗で体を拭いながらターレデが尋ねると、寝間着に袖を通しながらヴァンダレは答えた。少し迷ったようだったが、正直に。 「…穏やかでない一日を送ってしまったせいか、きつい眠気が訪れたとき無理に逃がしてしまったせいか、体がなかなか眠たがらないのです。私は、もうしばらく起きていても良いですか?ターレデ様がもうおやすみになるよ

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