増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ひとふで小説|レンガイケッコン(11)

ひとふで小説|レンガイケッコン(11)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (11)  蓮本のカゴの中身が食べ物一色になっている様子に東之が気付いたのは、先に並んでいた自分のカゴをレジ係の男性が引き寄せた時だった。 「…あの、殺虫剤…」 「ああっ…!やだ」  話し相手の居る買い出しに夢中で本来の用事をすっかり失念した蓮本は、東之の忠告で難を逃れることができた。お礼に二人分を合わせて払ってしまおうかと思ったが、既に東之は財布を半分開いているし、会計作業は始まっている。ここで「私が払います」「いや結構です」と

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ひとふで小説|レンガイケッコン(10)

ひとふで小説|レンガイケッコン(10)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (10)「こんな作業服でこんな綺麗な車に乗るの、申し訳ないですね…。車側も想定してないんじゃないですか。…えっこんなダサい格好の人乗せるの?って思って、急にエンストしたりするんじゃないですかね…」  駐車場の中を徐行している時、東之が言った。両脇に並んでいる車の中には、蓮本の愛車をゆうに上回る高級車も並んでいたが、それでも内装も外装もこれほど手が行き届いている車はそうそう見つからなかった。 「いいじゃないですか、作業服。私好きで

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ひとふで小説|レンガイケッコン(9)

ひとふで小説|レンガイケッコン(9)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (9) カン!とした、乾いたチリトリの落ちた音を、エントランスが幾重かに響かせる。  蓮本は持ってきた書き置き用のメモをくしゃくしゃにポケットへ突っ込みながら東之に駆け寄って、チリトリを拾ったついでに重そうなゴミ袋もやや強引に引き取った。 「あ、いいですいいです!汚いですよ!ごめんなさい!」 「だ、大丈夫ですか?痛かったですよね、今のは。転ばなくて良かったけど…」 「大丈夫です、すみません!あはは、もう。躓いちゃいました、不注意

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ひとふで小説|レンガイケッコン(8)

ひとふで小説|レンガイケッコン(8)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (8) 階段を下っただけだというのに、管理人室に戻った頃には結構息が上がっている。殺虫スプレーの入った戸棚に手を伸ばそうと屈んだ時には、ちょっと圧迫されて、はあはあと息が漏れてしまった。 (はあ、あったあった、良かった)  東之はスプレー缶をサッサッと上下に振って、中身の重さを確かめた。 (あるよね。良かった。ゴキブリ一匹やるぐらいなら充分かな。苦手じゃないって言ってたし)  掃除中は特にエレベーターは使わないようにしている。

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ひとふで小説|レンガイケッコン(7)

ひとふで小説|レンガイケッコン(7)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (7)「わぁ…!!!!…か、管理人さん…。ごめんなさい、居ると思ってなかったから、びっくりしちゃいました。こんにちは!」  思わず驚いた声を上げてしまった非礼を蓮本が詫びると、東之は、 「いいええ。こんにちは」  と柔らかく微笑みながら軽く会釈して、すぐにそのまま清掃作業に戻った。真面目だと思う。 (管理人さん、偉いな。私なら立ち話を始めてしまう場面なのに…)  なんらかの企図は、よほど明確な意思を持って行うべきなのかもしれな

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ひとふで小説|レンガイケッコン(6)

ひとふで小説|レンガイケッコン(6)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (6) 世界を真っ二つに分けたとして、蓮本は虫が平気な人材側の所属であることを自負している。  あらゆる種類のムシが平気というわけではないし、興味や可愛いげを感じて愛でることもないが、それでも何の気無しに飼育できた程度には平気だ。  カブトムシ各種、クワガタムシ各種、テントウムシ各種、トンボ各種は幼少期に採集した成り行きで飼ったことがある。尤も、ここで言う「飼った」というのは本格的な昆虫愛好家のそれではなく「子供が想像力の範囲

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ひとふで小説|レンガイケッコン(5)

ひとふで小説|レンガイケッコン(5)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (5)  自分に対してさえ『恋外結婚』を明確に定義づけることはできていなかったが、とにかく蓮本は、どうにか東之と親しくなれないかを考え続けている。  惰性で飲み続けた紅茶はもう三杯目、悩んでいる時の蓮本はいつもこうだった。1箱100杯299円。計算上は1杯約3円になるはずだが、同じティーバッグで淹れ続けたので紅茶の外箱に書かれた売り文句の計算は既に狂わされている。  蓮本は決して世に言う“ケチ”ではなかったが、こだわりが強かっ

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ひとふで小説|レンガイケッコン(4)

ひとふで小説|レンガイケッコン(4)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (4) 起き抜けの紅茶を啜りながら、蓮本は考え込んでいた。大問題は、“どう『結婚』を申し込むか” である。よくは知らない相手に、唐突に、しかも同性が。  きっと「女同士の話」と言っても異なる意味で取られるに違いないので、異性同士で言うところの「男女のこと」というのを、同性の場合は一体、どのように一言で、どのようにニュアンスごと表せばいいのか、蓮本には分からなかったが、とにかく恋や愛や結婚にまつわることで異性同士に起きても難しいこ

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