増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ひとふで小説|レンガイケッコン(11)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (11)  蓮本のカゴの中身が食べ物一色になっている様子に東之が気付いたのは、先に並んでいた自分のカゴをレジ係の男性が引き寄せた時だった。 「…あの、殺虫剤…」 「ああっ…!やだ」  話し相手の居る買い出しに夢中で本来の用事をすっかり失念し…

ひとふで小説|レンガイケッコン(10)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (10) 「こんな作業服でこんな綺麗な車に乗るの、申し訳ないですね…。車側も想定してないんじゃないですか。…えっこんなダサい格好の人乗せるの?って思って、急にエンストしたりするんじゃないですかね…」  駐車場の中を徐行している時、東之が…

ひとふで小説|レンガイケッコン(9)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (9)  カン!とした、乾いたチリトリの落ちた音を、エントランスが幾重かに響かせる。  蓮本は持ってきた書き置き用のメモをくしゃくしゃにポケットへ突っ込みながら東之に駆け寄って、チリトリを拾ったついでに重そうなゴミ袋もやや強引に引き取っ…

ひとふで小説|レンガイケッコン(8)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (8)  階段を下っただけだというのに、管理人室に戻った頃には結構息が上がっている。殺虫スプレーの入った戸棚に手を伸ばそうと屈んだ時には、ちょっと圧迫されて、はあはあと息が漏れてしまった。 (はあ、あったあった、良かった)  東之はスプ…

ひとふで小説|レンガイケッコン(7)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (7) 「わぁ…!!!!…か、管理人さん…。ごめんなさい、居ると思ってなかったから、びっくりしちゃいました。こんにちは!」  思わず驚いた声を上げてしまった非礼を蓮本が詫びると、東之は、 「いいええ。こんにちは」  と柔らかく微笑みながら…

ひとふで小説|レンガイケッコン(6)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (6)  世界を真っ二つに分けたとして、蓮本は虫が平気な人材側の所属であることを自負している。  あらゆる種類のムシが平気というわけではないし、興味や可愛いげを感じて愛でることもないが、それでも何の気無しに飼育できた程度には平気だ。  …

ひとふで小説|レンガイケッコン(5)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (5)  自分に対してさえ『恋外結婚』を明確に定義づけることはできていなかったが、とにかく蓮本は、どうにか東之と親しくなれないかを考え続けている。  惰性で飲み続けた紅茶はもう三杯目、悩んでいる時の蓮本はいつもこうだった。1箱100杯299円…

ひとふで小説|レンガイケッコン(4)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン) (4)  起き抜けの紅茶を啜りながら、蓮本は考え込んでいた。大問題は、“どう『結婚』を申し込むか” である。よくは知らない相手に、唐突に、しかも同性が。  きっと「女同士の話」と言っても異なる意味で取られるに違いないので、異性同士で言う…