増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ノート

ひとふで小説|9-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[IX]

前章:[I]〜[収録マガジン]

IX

「ヴァンダレ様、いかがなご様子ですか?落ち着いて眠れそうですか?それとも、何か食べられますか?」
 雪棉糸を平織りした大きな浴紗で体を拭いながらターレデが尋ねると、寝間着に袖を通しながらヴァンダレは答えた。少し迷ったようだったが、正直に。
「…穏やかでない一日を送ってしまったせいか、きつい眠気が訪れたとき無理に逃がしてしまったせいか、体がなかなか眠たがらな

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ひとふで小説|レンガイケッコン(9)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(9)

 カン!とした、乾いたチリトリの落ちた音を、エントランスが幾重かに響かせる。
 蓮本は持ってきた書き置き用のメモをくしゃくしゃにポケットへ突っ込みながら東之に駆け寄って、チリトリを拾ったついでに重そうなゴミ袋もやや強引に引き取った。
「あ、いいですいいです!汚いですよ!ごめんなさい!」
「だ、大丈夫ですか?痛かったですよね、今のは。転ばなく

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ひとふで小説|レンガイケッコン(5)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(5)

 自分に対してさえ『恋外結婚』を明確に定義づけることはできていなかったが、とにかく蓮本は、どうにか東之と親しくなれないかを考え続けている。
 惰性で飲み続けた紅茶はもう三杯目、悩んでいる時の蓮本はいつもこうだった。1箱100杯299円。計算上は1杯約3円になるはずだが、同じティーバッグで淹れ続けたので紅茶の外箱に書かれた売り文句の計算は既に

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ひとふで小説|レンガイケッコン(4)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(4)

 起き抜けの紅茶を啜りながら、蓮本は考え込んでいた。大問題は、“どう『結婚』を申し込むか” である。よくは知らない相手に、唐突に、しかも同性が。
 きっと「女同士の話」と言っても異なる意味で取られるに違いないので、異性同士で言うところの「男女のこと」というのを、同性の場合は一体、どのように一言で、どのようにニュアンスごと表せばいいのか、蓮本

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ひとふで小説|レンガイケッコン(3)

これまでのお話:(1)(2)

(3)

 昨晩、翌日の打ち合わせに備えて早寝するつもりだった蓮本のスマートフォンが、寝る支度を始めた頃に通知を鳴らしたので、仕事の用件か、一度「おやすみ」のメッセージを交わして寝たはずの彼が起きたのかと思って開いたら、電子書店のアプリが放った「読書ポイントの有効期限があと半日で切れます」というアラートだった。
 ポイントなんかすっかり忘れていたくらいだから知らぬ間

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ひとふで小説|レンガイケッコン(2)

これまでのお話:(1)

(2)

 いつもどおりに会釈して通過すると思った相手が管理人室の小窓に近づいてきたのは、会釈だけの関係が四ヶ月ほど続いたある昼下がりだった。抹茶色の紙袋を持って近づいてきた蓮本は、
「あのー…、和菓子、お好きですか…。餡子なんですけど…」
と、紙袋を持った左手を心臓あたりの高さに擡げて苦味のある笑顔で軽く頭を下げた。あいにく餡子が苦手な東之は、あー…と言いながら少しの間

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ひとふで小説|レンガイケッコン(1)

(1)

「恋愛を結婚と繋げよう、というのがそもそも無理があるんじゃないかと思ったんですよね」
 壇上で話す女性は、気位の高そうな仕立てのいいジャケットを、しゃきっと着こなしている。羽織っている、でもないし、着ている、でもない。しゃきっと着こなしている。
 柔らかな髪が肩にもたれながら胸元に落ち、鎖骨のところどころを隠していた。時折体勢を変えると、そのたび首元のネックレスが照明にキラキラと反射する

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