増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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ノート

ひとふで小説|レンガイケッコン(9)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(9)

 カン!とした、乾いたチリトリの落ちた音を、エントランスが幾重かに響かせる。
 蓮本は持ってきた書き置き用のメモをくしゃくしゃにポケットへ突っ込みながら東之に駆け寄って、チリトリを拾ったついでに重そうなゴミ袋もやや強引に引き取った。
「あ、いいですいいです!汚いですよ!ごめんなさい!」
「だ、大丈夫ですか?痛かったですよね、今のは。転ばなく

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ひとふで小説|レンガイケッコン(2)

これまでのお話:(1)

(2)

 いつもどおりに会釈して通過すると思った相手が管理人室の小窓に近づいてきたのは、会釈だけの関係が四ヶ月ほど続いたある昼下がりだった。抹茶色の紙袋を持って近づいてきた蓮本は、
「あのー…、和菓子、お好きですか…。餡子なんですけど…」
と、紙袋を持った左手を心臓あたりの高さに擡げて苦味のある笑顔で軽く頭を下げた。あいにく餡子が苦手な東之は、あー…と言いながら少しの間

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「会えない日と同じでしょ」(2)

■あらすじ

敦子、初めて会った日に宿題を押し付けた元気な先輩のこと。
美波、ポテトチップスを箸で食べていた死にたい友達のこと。
紀志重、気難しく優しく賢く美しい飄々とした女誑しのこと。

いまはもう居ない、そばに居た3人との年月を思い出しながら。私の切実な本当の時間が誰にも触れられないように、少しの嘘を混ぜながら。あの人たちの選んだ言葉や生き方が嘘にならないように、真実だけで固めた芯を通しながら

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