増刊|コミック無責任&文芸たぶん

15
ノート

ひとふで小説|10-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[X]

前章:[I]〜[収録マガジン]

X

 遠い日の悪夢に魘されたのは久し振りだ。
 相棒だった山耳犬と大巌猫を人魔に切り裂かれた十二歳の夕べを、思い出す。意識はぼんやりとしているのに、思い浮かぶ景色は鮮明だった。
「シオ、大丈夫?だいぶ魘されていたみたいだけど…。あの子たちが亡くなった日の夢を見たの?」
 今年、二十歳になったシオが汗にぐっしょり濡れて飛び起きたのは、西の空が焼け始めた夕刻。
 二

もっとみる
読んでくれただけじゃなくスキまで押してくれるのか!
14

ひとふで小説|9-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[IX]

前章:[I]〜[収録マガジン]

IX

「ヴァンダレ様、いかがなご様子ですか?落ち着いて眠れそうですか?それとも、何か食べられますか?」
 雪棉糸を平織りした大きな浴紗で体を拭いながらターレデが尋ねると、寝間着に袖を通しながらヴァンダレは答えた。少し迷ったようだったが、正直に。
「…穏やかでない一日を送ってしまったせいか、きつい眠気が訪れたとき無理に逃がしてしまったせいか、体がなかなか眠たがらな

もっとみる
今日のあなたのラッキーナンバーは0123456789
8

ひとふで小説|8-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[VIII]

前章:[I]〜[収録マガジン]

VIII

 相棒たちの遺体が綺麗な骨となったのはちょうど陽の出の頃だった。
 優しくゆすり起こすと、半分寝惚けたままのシオはターレデの腰に抱きついて、幼児が口にする喃語のようなものを二、三呟いてから、はっ、としたように飛び起きた。
 ヴァンダレが居たことを思い出したのだ。それから、昨日起きた悪夢のようなこともすべて、現実として。

 ヴァンダレは、野宿を遂げたシ

もっとみる
あなたが思ってるよりスキやSNSシェアの効果って大きいのよ…。
13

ひとふで小説|7-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[VII]

前章:[I]〜[収録マガジン]

VII

 心底、徹底して食を愉しむ主義なのか、或いは、単に口に合う食べ物が嬉しいのか。それとも、せっかく作ったターレデへの持て成しなのか、真意は分からなかったが、ヴァンダレの、どんなに真面目に話していても菓子を咀嚼するまでの間だけは顔が緩むところを、ターレデは既にひどく気に入っていた。
 また一つ、ターレデが作った菓子を口にほうったヴァンダレは、小麦酒を含んでか

もっとみる
すっ…スキだなんて…私もスキ…。シェアして頂けたら嬉しいです!
8

ひとふで小説|6-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[VI]

前章:[I]〜[収録マガジン]

VI

 ふと、サラは改まって礼を述べていないことを思い出し、ヴァンダレに深々と頭を下げ、村長に褒賞を出すよう進言したことを報告した。背後の炎が自分の影をヴァンダレに落としてしまい表情はよく見えなかったが、ヴァンダレは気さくな語り口で謙遜した。
「勝てたから、お礼を言って頂ける立場にあるだけです。負けていたら、皆さんを危ない目に遭わせてしまうところでした。礼には及

もっとみる
ありがとうございます。また読みに来てね。シェアして頂けたら嬉しいです!
12

ひとふで小説|レンガイケッコン(6)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(6)

 世界を真っ二つに分けたとして、蓮本は虫が平気な人材側の所属であることを自負している。
 あらゆる種類のムシが平気というわけではないし、興味や可愛いげを感じて愛でることもないが、それでも何の気無しに飼育できた程度には平気だ。

 カブトムシ各種、クワガタムシ各種、テントウムシ各種、トンボ各種は幼少期に採集した成り行きで飼ったことがある。尤も

もっとみる
わざわざ好意を伝えてくれるなんて素敵な人だなー!
11

ひとふで小説|4-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[IV]

前章:[I]〜[収録マガジン]

IV

「ヴァンダレ様は、どうして魔族を斃せるの?」
 夕闇の奥で黙々と、無垢な亡骸のための火葬と墓につかう穴を掘りながら、シオは尋ねた。
 胸の奥にくすぶる願いとヴァンダレに聞きたいことの本当の意味は「何故あなたは人魔を斃せるか」ではなかったが、シオはまだ己が何を求めて問い掛けたのか自覚的ではなかった。
 ターレデは穴掘りを手伝いながら黙って聞いている。
 ヴァ

もっとみる
また書くからまた来てね〜!シェアして頂けたら嬉しいです!
10

ひとふで小説|レンガイケッコン(4)

これまでのお話:(第1話)〜(収録マガジン)

(4)

 起き抜けの紅茶を啜りながら、蓮本は考え込んでいた。大問題は、“どう『結婚』を申し込むか” である。よくは知らない相手に、唐突に、しかも同性が。
 きっと「女同士の話」と言っても異なる意味で取られるに違いないので、異性同士で言うところの「男女のこと」というのを、同性の場合は一体、どのように一言で、どのようにニュアンスごと表せばいいのか、蓮本

もっとみる
すっ…スキだなんて…私もスキ…。シェアして頂けたら嬉しいです!
16

ひとふで小説|3-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[III]

前章:[I][II]〜[収録マガジン]

III

 湯の波打つ音の合間を縫って遠くから人のざわめきが聞こえる気がしたかと思うと、母屋の戸が開く音がする。なんとも不躾な、宿屋の主人だろうか。考える間も無いうちに湯場に繋がる裏口の扉が開くと、勢いよく入ってきたのは従妹のシオだった。
「ターレデ!ターレデ、助けて!」
 足を縺れさせながら駆け込んできたシオは一瞬だけヴァンダレの存在に怯んだが、そこから

もっとみる
すっ…スキだなんて…私もスキ…。シェアして頂けたら嬉しいです!
16

ひとふで小説|レンガイケッコン(3)

これまでのお話:(1)(2)

(3)

 昨晩、翌日の打ち合わせに備えて早寝するつもりだった蓮本のスマートフォンが、寝る支度を始めた頃に通知を鳴らしたので、仕事の用件か、一度「おやすみ」のメッセージを交わして寝たはずの彼が起きたのかと思って開いたら、電子書店のアプリが放った「読書ポイントの有効期限があと半日で切れます」というアラートだった。
 ポイントなんかすっかり忘れていたくらいだから知らぬ間

もっとみる
ありがとう、これでまた頑張れます。シェアして頂けたら嬉しいです!
19