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増刊|コミック無責任&文芸たぶん

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【増刊 文芸たぶん】は勢いで書いた「ひとふで小説」と定期連載化できない物語調の書き物を収録しています。仕事コラムなどのルポ系読み物は他のマガジンにまとまっています。 【増刊 コミ… もっと読む
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記事一覧

ひとふで小説|レンガイケッコン(17)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (17)  蓮本に素性を知られる不快の理由には「親しくない相手に大事なことを把握されている」というのも、きっとある。それならば、せっかく近付きつつある“好意的な顔見知り”から“友達”に格上げされることを目指すのも一つの道だろうか。  友達は難しくとも、せめて顔見知りから“知人以上友人未満”程度の関係性に格上げしてもらえれば、蓮本が自分の身の上を知っていることにも納得がいくかもしれない。  順番が逆だとしても、結果的に納得のい

犬の一生と人(3)

(3) 「はじめての空気清浄機」 ●今回の人● 小笠原さんの同居人さん ●今回の犬● おがさわら ハンサム(オス) フサフサした小型犬。雑種。ソウルフードは三角の小粒の茶色のカリカリ。 『犬の一生と人』は、『犬の一生』に出てくる犬の飼い主にスポットをあてた特別編です。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 次のおはなし 初出:本記事 作者:中村珍|コミック無職

犬の一生(15)

第15ワン 「あなたにあげたいものがあなたのほしいものとは限らない」 ●今回の犬● こぶちざわ ガオー(オス) 大きな大きな大型犬。嫌なことは嫌。ソウルフードは大きな三角のカリカリ。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 次のおはなし 初出:本記事 作者:中村珍|コミック無職

ひとふで小説|レンガイケッコン(16)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (16) 「管理人さんシートベルト、しました?大丈夫ですか?」 「あ!は、はいっ!はいっ!帰りは大丈夫です!さっきは、緊張しちゃって、ははは」 「帰り?行きもシートベルトちゃんとしてましたよ?」 「あ、あ、そっか、西関さんは気付いてないですよね、ごめんなさい、恥ずかしいから余計なこと言わなきゃ良かったな。実は来る道では乗る時に緊張しちゃってシートベルトうまくいかなくて、高級車はシートベルトも難しいな、全然はまらないなとか思っ

犬の一生と人(2)

(2) 「違いのわかるヒト」 ●今回の人● 三矢守さん ●今回の犬● みやもり ボス(メス) そのうちきっと大型になる子犬。秋田犬の雑種。ソウルフードは四角い子犬用のカリカリ。 『犬の一生と人』は、『犬の一生』に出てくる犬の飼い主にスポットをあてた特別編です。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 次のおはなし

ひとふで小説|レンガイケッコン(15)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (15)  運転席に乗り込もうとした蓮本は思い出したように身を引き、前を半ドアにしたまま後部座席のドアも開ける。後ろにスーパーの袋を置きながら、 「お荷物、邪魔だったら後ろも自由に使ってくださいね」  と言った。 「ありがとうございます、でも大丈夫です。そんなに多くないですから」  汁気が漏れ出る虞れのある物は袋に入っていないから後部座席に荷物を置いたところで蓮本にかかる迷惑は恐らくないのだろうが、どうしても、の理由でもない

ひとふで小説|12-イェダラスカレイツァ:バルヴァリデ[XII]

これまでのお話:初回-I前回-XI|収録マガジン XII 生まれてこのかた見知った村人ばかりに囲まれて暮らした二人の村娘は、都会を過ごすにはいささか無防備な心を持っている。 「ご、ごめんなさい!」  先に口を開いたのはシオだった。大国の城下町で地べたに寝転ぶ姿を目撃される事がどれほど深い恥を我が身に与えるものか思い知りながら、すぐさま跳ね起きた。  ターレデも旅に軋む背中を慌てて起こし、何度も何度も頭を下げる。 「人通りの少ない路地の裏だったので、どなたも通らないかと…失礼

犬の一生(14)

第14ワン 「シーツ警察犬のパトロール」 ●今回の犬● どま クロワッサンパン(オス) とろふわな肌触りのシバイヌ。ソウルフードは四角い缶に詰まっている野菜とお肉が混ざったテリーヌみたいなもの。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 次のおはなし

ひとふで小説|レンガイケッコン(14)

これまでのお話:第1話/収録マガジン(前回まで) (14) 駐車券を誰が持っているか忘れているのだろう、精算機の前で立っている蓮本の表情はみるみる翳っていく。 「…管理人さん…私もしかしたら…」 「駐車券ですよね?」  徐に顔を上げた蓮本は隣に立つ東之を振り返って首を縦に振ると、今から涙目になる用意が整った顔をして、普段より上ずった声で言った。 「そう…!どうしよう、駐車券なくしちゃったかも…紛失した時ってどうするんだろう、初めて失くしたから…管理事務所に電話すればいいの?

犬の一生と人(1)

(1) 「先代犬の記憶、新しく来た若犬」 『犬の一生と人』は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション『犬の一生』の不定期特別編です。この漫画には『犬の一生』に登場する犬の飼い主が現れます。 ●今回の人● 小笠原さんと同居人さん ●今回の犬● おがさわら ハンサム(オス) フサフサした小型犬。雑種。ソウルフードは三角の小粒の茶色のカリカリ。 次のおはなし

ひとふで小説|レンガイケッコン(13)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (13) 「やめてください、恐れ多くて最後まで何も食べられないまま帰ることになっちゃいます」  溜息の混ざった苦笑を声に絡ませて、東之は答えた。 「それで、西関さんは何も悪くないのに、私きっと本当は、すごく!…すき焼き食べたかったのに、食べられなかったのと空腹感でちょっとヘイト溜めそうになったりして、西関さんトバッチリ受けますよ、私なんか呼ばないほうがいいですよどうせ楽しい話もできないし」  冗談半分の前半を言い切ったあとの後半部

犬の一生(13)

第13ワン 「流浪んち」 ※モザイクをかけてありますが、おトイレのネタなのでご留意ください。 ●今回の犬● どま クロワッサンパン(オス) とろふわな肌触りのシバイヌ。ソウルフードは四角い缶に詰まっている野菜とお肉が混ざったテリーヌみたいなもの。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 次のおはなし

ひとふで小説|レンガイケッコン(12)

これまでのお話:前回/第1話/収録マガジン (12)  汁気の多いカツ丼のためにビニール袋を1枚だけロールから捥いだ蓮本は、軽く苦笑のような溜息をついた。 「このビニール袋も、レジ脇に設置して必要な枚数を売ってくれればいいんじゃないかな。お金を払った利用者へのホスピタリティ的な設置なんだろうけど、タダじゃないんだし」  溜息は、ビニール袋を過剰に持ち帰る迷惑客の存在に対する落胆が主な理由。苦笑は、ポスターに書かれた文言をうまく面白がれなかったこと、もとい、東之と笑うタイミン

犬の一生(12)

第12ワン 「最近よくあるこういう日」 ●今回の犬● みなもと タタンタ(メス) 大人になったら多分中型になる甲斐犬の雑種。ソウルフードは丸のような四角のような小粒のカリカリ。 *この漫画は、犬と暮らした時に溜まったエピソードを元にしたフィクション作品です。 他のおはなしが収録されているマガジン こちら 初出:本記事(コミック無職)/作者:中村珍